気ままなモノづくり日記

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タイへ赴任して2年 振り返り 220815

タイへ赴任して2年 振り返り 220815

2019年9月にタイに赴任してから早くも2年が経ちそうです。一つの節目になりますので当時と今の振り返りをしたいと思いました。

タイへの赴任当時について

元々、国内の設備開発部隊で業務をしており、タイ工場へ赴任する予定は全くなかったのですが、国内で開発してからタイ工場へ移管した商品と生産ラインの量産がうまくいかずに、急遽支援が必要ということで赴任したような形になります。

当時は、移管プロジェクトの失敗を巡って事業部と工場が激しく衝突しており、その間で立ち回らればならないことで非常に辛い思いをしました。

移管プロジェクトの問題点

移管PJTの問題点として、以下の2点が大きな問題だったと考えています。

  1. 国内で開発したラインが量産をするうえでは機能不十分であった
  2. 工場側で自動化レベルの高いラインを運用するノウハウがほとんどなかった

1点目に関しては完全に国内側のライン開発に問題がありました。現場や製造を十分に把握していないメンバーでライン開発を実施したため、工程条件が安定せずに量産中に工程条件評価を行ったり、設備の安定稼働性が十分に検討されておらず設備トラブルが多発したり等で原因分析、課題解決に非常に時間がかかりました。私の赴任元の部門が開発したラインでしたので、時には先輩の開発した工程や顔も知らない設備メーカーの方に何度も何度も改善依頼や駄目出しを繰り返して、少しづつ修正していった形です。

2点目に関しては、工場側に自動化レベルの高いラインの維持管理の運用ノウハウが全くと言っていいほど不足しており、保全スタッフが設備トラブルを復旧できない、製造部が自動化ラインでの製品の流し方を理解しない、タイのメンバーが現場の改善まで踏み込めるだけの知見とスキルを持ち合わせていない等、工場側での自主的な改善が全く進みませんでした。タイのメンバーも上手くいかないのは日本の責任としてしまって(実際そうなのですが)、自分たちはノウハウを引継ぎされていないの一点張りで、自分たちでノウハウを作っていこうとする雰囲気が中々生まれませんでした。

 

結果として、ラインのドカ停の多発、不良率が下がらない等の問題が発生し、製品供給能力が不足して顧客への納品が間に合わないという危険な状況となっていました。

ライン改善PRJにあたり苦労したこと

ライン設計において、個人的に一番重要だと思う事がコンセプトが合っていること、次点がメカの設計がきちんとできていることです。この2点が上手く設定されておらず、コンセプトの不一致に関してはどうしようもありませんでしたが、メカ設計が商品とミスマッチしている部分に関しては修正しなければ量産が継続できませんのでまずはメカ設計の修正に着手しました。

メカ設計の修正にあたりほぼすべての設備が何かしらの問題を抱えており、しかも同じ仕様の設備を8ライン分を増設してしまっていたため改善のボリュームに苦労しました。

メカ設計で主に問題となっていたのは、長期間使用した際の安定性を検討できていない、ユーザーの使い勝手を考えられていないなどです。実験機であれば多少のトラブルは許容できますが、量産で使用するとなると可能な限り長い時間だけ設備運転させることが工場損益のうえで重要となりますので、設備が安定稼働しないとすべての前提が崩れてしまいます。

実際、設備の問題点はパッと見たら分かるような内容が多かったですが、設備を既に海外に設置してしまっていることから設備メーカーの直接サポートを受けることができませんでした。(私が赴任した2020年はちょうどCovid-19の真っただ中で、海外出張するにも2週間の隔離が必要といった制約があり、海外の移動がほぼ不可能な状況でした。)

ということで、メーカとWebで問題点、改善策を協議しながら、改善実行は工場のメンバーと国内からの長期出張者メインで請け負わざるを得なかったのですが、改善PJTに割り当てされた工場側のタイ人のスタッフのほとんどが入社3年目以内の若いスタッフばかりで基礎教育が十分にされておらず、指導にも非常に苦労しました。(上層部のやる気を疑いたくなる配員でしたが、タイ工場では中堅スタッフが育たない、もしくは中間層がいないため超ベテランと若手との二極化が問題となっていました。)

 

改善PJTの現在

改善PJTでは、時間こそかかりましたがスタッフ総出で少しずつ改善を進めたこともあり1年経過する頃には設備の状態は当初よりも大幅に改善し、2年経つ頃にはライン設計面での問題点はほぼほぼ解消できつつあり、元ライン開発部隊に所属していた自分の使命は果たせたのかなと考えています。

一方で、前述した工場側の課題については今も根深い問題が多数残っており、当初はライン設計の方が悪いという雰囲気だったのですが、今となっては工場側の不手際の方が顕在化して目立つ結果となっています。

製造面の課題については、タイ人スタッフが積極的に改善に動くことをしなかったため現状維持が続いてしまっていましたので、今後は製造の維持管理の改善に注力していきたいと考えています。

 

余談 現状を維持するためにも改善を続けなければいけない

これはモノづくりの現場で感じたことなのですが、以前できていたことが人の入れ替わり等でいつの間にかできなくなってしまっていることは往々にしてありますので、現状維持のためにも改善をし続けるということが必要です。逆に継続して改善を続けたとしても現状維持になってしまうこともありますので、さらに上のレベルを目指すには常に改善をし続けるという意識を強く持たなければいけません。

これは、あらゆることで通じる心理かと思います。

私もゴルフの上達のために毎回改善に取り組んでいますが、以前できていたことができなくなるスピードと上達のスピードが釣り合ってしまっているため、長期間スコアが停滞中です。とはいえ、練習しなくなると劣化が進むのは間違いありませんので、何事も常に改善し続ける意思を持つようにしなければいけません。