電源系の配線にはY端子は使うべからず
不具合状況 電源配線の焼損
とあるマレーシア製の設備に付属している真空ポンプの電源回路のセット機器で電源回路の焼損事故が発生したとの報告が保全チームから入りました。
当該の回路を確認しますと、完全に焼け落ちていました…。火災にならなくて良かった。。。
上記赤丸が焼損箇所
原因分析 配線の接触不良
以前もこの電源回路で焼損が発生したことがあるのですが、その際は真空ポンプの電源仕様の不具合が原因で常時過負荷状態となっており配線にかかる電流値が徐々に上がっていき、最後はヒューズが定格を越えてトリップしたという問題でした。(この件は別途記事にしたいと考えております)
今回も念のため真空ポンプの電流値を確認したところポンプのスペック通りの正常値を示しておりポンプ側の問題は特に見当たりませんでした。
(電流値は定格どおり)
20Aのヒューズはトリップしていないことから、配線の接触不良(コネクタが抜けかけて半接触となっていた)が原因のように思いました。また、社内のスタッフのヒアリングをしていますとタイ人スタッフの配線作業ミスである可能性が高いように思いました。
ということで、私自身はヒューマンエラーとしてこの問題を処理しようとしていたのですが、主管部門に連絡するとちょっと待てよと、、この度焼損が発生した電源回路に使用されていた端子にY型端子を使用されており、これは社内設備仕様書で規定に準拠していないとのこと。。。えー、面倒なことになってしまった。。。。
端子について調査 Y端、R端について
ということで社内設備仕様書やネット等や情報を調査していたところ、以下のことが分かりました。
実はY型の圧着端子はJIS規格に準拠していないようで、JIS規格に適合しなければいけない場合は原則R(O)型圧着端子を使用することになるそうです。
Y型は作業性に優れる分、端子抜けが発生しやすいため(過去に2度ほど経験)かと思います。
Y端子がJISに準拠していないというのは初めて知りました。とはいえ、日本の設備メーカの配線においても24V未満の制御回路には作業性を優先してY型を使用されているケースが多いように思います。R型圧着端子は取り外しのためにネジを抜き取らないといけず作業が手間ですので、私はR型端子が使われているの見ると正直凹みます。
自社の設備仕様書内では電圧42V以下であればY型端子を使用することが認められておりました。
焼損した真空ポンプの配線の電圧はというと、、、、
200V、、、、、!
はい、完全にアウトですね。
冒頭にもお話したとおりこの電源回路を設計したのはマレーシアの設備メーカになるため、JIS(Japan industrial standard)に準拠していないのは当然かといえば当然なのでした。
ISOやANSIには準拠しているようですが、基本的にはメーカ標準の電気配線仕様となっているとのこと。
うーん、仕方ないよねって気がしてしまいますね。。。
余談(メーカ設備仕様書について)
自社の設備仕様書(1000頁くらいありそうな書類一式)を契約前にメーカには提示していますので、こちらからは後からでもメーカの不適合を指摘できる訳です。これが設備製作の恐ろしいところで、後から問題を発見されて叩かれる可能性が大いにあります。
設備仕様書は各メーカ毎に異なりますし、非常に膨大なボリュームですので都度いちいち目を通していられないというのが設備製作側の本音になりますが、きちんと確認しておかないと自社負担で不具合対応を求められる可能性があります。
(メーカ専用の設備仕様書については別途コラムを設けたいと思います。)
今回の事例では、電源回路の端子を全てY型からR型に変更することになると思います。工場からしても量産の合間に設備に変更を加えるのは非常に手間です。
余談の余談
ちなみに私は、設備仕様書だけメーカさんに渡して、後はヨロシク!というやり方は好きではありません。設備製作を依頼する担当者は、膨大な資料の中から僅かな記載にも気を遣わないといけないメーカさんの苦労、後で不具合が発覚して対処に追われる工場側の苦労を理解しておいた方が良いと思いますし、設備仕様書の内容はきちんと理解しておくべきなのです。
お互いの手間やミスを防止するためにも、立会検収のチェックリストに項目として加えておくようにするのが良いように思います。そうすれば、最悪出荷前には気づくことができると思いますので。
※自社の設備仕様書には非常に分かりづらい記述の仕方となっており、これを海外メーカに読み解けというのも少々酷だなと思った次第です。