気ままなモノづくり日記

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230124 商品開発トレンドの変化 ~プロセスから開発するモノづくり~

230124 商品開発トレンドの変化 ~プロセスから開発するモノづくり~

こんにちは、Rokiです。今日は気合を入れて少し長めの記事を書きたいと思います。タイトルは上記のとおりですが、モノづくりの現場や競合他社を見ますと最近の成功している商品開発のトレンドがひと昔前よりも変化してきているように思います。

従来型のモノづくりは商品設計から始まっていた

鶏が先か、卵が先かという永遠の議論がありますが、モノづくりに関しては従来より商品設計が先、プロセス設計(工程設計)が後とはっきりしていました。これは市場の需要や顧客要求を上流と位置付けて、上流から商品設計が生まれ、商品設計から中流のプロセス設計を行い、下流の現場でモノづくりを行うという一連の流れが非常に自然であることから受け入れやすい考え方だと思います。

逆に、中流下流のプロセス設計や現場から実施したとしても激変する市場や顧客要求にマッチしなければの商品自体が売れないため、修正が生じた際の手戻りが非常に大きくなることは想像に難くないかと思います。

これには、作りやすいもの作るのではなく、市場に受け入れられるものを優先して作るというビジネス戦略が根底にあるように思います。

プロセス技術の劇的な進化によって商品開発の流れが逆転し始めている

一方で、近年ではプロセスを構成する加工設備の劇的な進歩によって、プロセスから開発を進めることにメリットが現れるようになってきました。各社メーカの標準機の性能が劇的に向上したため、標準機の使用を前提とした商品設計とすることで圧倒的な生産性で他社と差別化することができるようになってきました。

また、汎用性においてもメーカ標準機が著しく進歩したため、ある程度の商品設計変更は設備のロバスト性でカバーできるようになり商品設計変更によるロスの影響が非常に小さくなりました。さらに標準機であればメーカのアフターサービスを受けやすく、現場での運用もマニュアル化しやすいため簡単でメンテナンスコストも抑えることが可能です。

近年、日本の製造業が世界的に遅れを取っているように見えますが、日本の大手メーカは装置産業に力を入れており、装置開発能力では依然日本とドイツが世界をリードしているように思います。半導体業界でも、半導体を直接製造している日本メーカは僅かですが、半導体製造装置販売を軸にしている日本メーカは多数存在しておりサイクルタイムの激しい半導体業界において装置ビジネスで大きな利益をあげています。

例をあげますと、マウンターやAOIなどはメーカ標準機の性能が素晴らしいため、これらのプロセスを使用することを前提とした汎用的な商品設計を行う方が優位になる可能性があります。

中流から上流へ、商品設計が最適ではなかったとしても生産プロセスによって生じる利益が商品設計のデメリットを打ち消す可能性が出てきているということです。もっと具体的に言いますと、顧客が求めるのはQCD(Quality、Cost、Delivery)ですが、コスト、デリバリーを優先する顧客にとっては、生産性の高い商品は多少の品質を犠牲にしたとしても魅力的な商品となる可能性が高いです。

装置の進化に商品設計を追従させる

以前記事にしたPLMというシステムも、PLM自体に価値がある訳ではなく生産プロセスを最適化した商品開発ができることに価値があるのです。さらに、生産プロセスを最適化しようとするとプロセスを構成する装置の性能の影響が非常に大きくなってきています。従来型の市場や商品設計だけに注力してプロセス設計は後から考えるモノづくりでは、圧倒的な生産性を有する装置を使用できなくなるリスクがあり、プロセス設計を考慮しない開発のデメリットが大きい環境になってきているのです。

まとめ 今後の製造業のエンジニアに求められる変化について

このような環境の変化によって、各層のエンジニアの求められる姿というものにも一定の変化が生じると考えています。設計者や顧客担当者は、設計が上流で設計に合わせて中流下流が動くという従来型のモノづくりから、プロセス設計や現場を理解して下流中流から商品設計を行うプロセス型の開発割合を増やしていかなければならないと予想します。

また、プロセス、設備開発系のエンジニアはメーカ標準機と自社設計設備の使い分けを今まで以上に最適化していくことを求められるはずです。メーカ標準機の進歩が著しいこの時代では自社設計設備を使うメリットが小さくなっているため、メーカ標準機の性能を十分に理解して上手に活用すること、また活用しやすいように商品設計に反映することが生産性の改善に役立つはずです。一方で、自社設計設備、特注設備をメーカ標準機の進歩に追従すべく工夫を凝らすことや、使いどころを見極める必要性が高まるでしょう。

 

この件に関してはもっと色々書きたいことがありますが、時間の都合もあり今日はこの辺にしておきたいと思います。