気ままなモノづくり日記

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タイでの生活を振り返る(4週目) ~ほぼ詰み状態のプロジェクトをどう立て直すか~

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ほぼ詰み状態のプロジェクトをどう立て直すか

前書き

こんにちは、Rokiです。

タイでの工場生産技術生活の4週目に突入しました。

現状のラインの状態が見えてきましたが、いやー酷いの一言ですね(笑)

同じラインが6ライン並んでいるのですがラインの稼働率(設備が問題なく動いている時間)は50%を超えない日がほとんど、つまり常にどこかでトラブルが発生して設備が止まってしまっている状況です。

4週間ラインを観察しましたがどれだけのトラブルが潜んでいるのか底が見えず、これを来年2月までに85%近くまでもっていかなければ顧客要求を達成できる見込みが立たないのですが、時間軸的に考えても90%、いえ97%詰んでいる・・。

ここでリセットボタンを押せないのが現実世界の辛いところです・・・。

そもそも機械設計ミスともいえるような不具合や機器の設定がきちんとできていないなど未だに初歩的なトラブルが多発しており、どうしてこんな状況で1号ラインでしっかりバグ出し&改善せずに、残りのラインの追加投資を実行したのか当時の担当者の首を絞めたい気分です。

先週タイは4連休だったのですが、当然休んでいる暇もなく4日中3日は出勤かつ残り1日もほぼ家でも仕事状態で、タイのメンバーからYou're crazyと冗談を言われてしまいました。

4週間こちらに駐在して分かってきたのですが、ローカルメンバーの生産技術のレベルが相当低いんですよね。1年半前からあった工程らしいのですが場当たり的な改善がほとんどでRoot cause(真の原因)はそのまま放置されており、設備ベンダーや日本本社との連携も不十分です。

どうしてこんな状態の工程を放っておくのかというところですが、非常に若いエンジニアが多く、問題点は指摘するものの改善はできておらずポテンシャル的には十分なのですが彼らを指導できる人が今までいなかったのでしょう。

工程の異常な状態が普通になってしまっており、不良が流出していないのか本当に心配です。

 さて、このような状態になってしまったラインをどのように立て直すべきか私なりに戦略を検討しました。

1.KPI(正しいターゲット)を設定する

 KPIとはKey Perfomance indicator のことです。KPIに関しては本やネットでいろんな情報が手に入ると思いますので、ぜひ一度詳しく調べてみて下さい。

要は、プロジェクトの方向性を一致させる目的のもと、効果を得るために最適な目標値を設定するということです。
今回は部長からの提案で、1ラインあたりの能力(生産数量/月)をKPIとして設定しました。達成期日は2021年2月末までです。

何故このKPIが重要なのかというと、顧客要求数がおおよそフォーキャストされており現時点では明らかに未達の状況だからです。これを達成できない場合はラインの追加投資をして能力を上げるしかないのですが、こうなることが最悪シナリオで能力の低いラインを追加投資することでこれが不良債権となってしまいます。

ですので、ここまでライン能力が上がればこれ以上追加投資が必要ないというライン能力を目標値として設定しまして、これを最大化することを第一に優先してプロジェクトの改善活動を実行します。このゴールを明確化する作業をしなければプロジェクトの担当者の方向性がバラバラになってしまいチームとして上手く機能しなくなります。

2.問題点を抽出して優先度と対応期日を設定する

 KPIの設定することで到達すべきゴール(理想でも構わない)が明確化できました。次のステップは、ゴールと現実のギャップがあるところを徹底的に洗い出していきます。

問題点は無数にあるかと思うのですが、時間軸的にも全てに正面から対応することは不可能ですのでKPIに対して効果の高いものから優先順位をつけていきます。
KPIを設定することで抽出すべき課題を絞り込むことができ、さらに優先順位付けが非常に簡単になります
今回の場合は設備トラブル、不良率、工程設計(製品が効率的に流せない)など様々な方面からKPIに対して効果的な課題を抽出して優先度と対応期日を設定します。

ゴールが設定されることで逆算思考で計画を組むことができるのです。

※これまでは、トラブルが目に付く度に場当たり的に対応しており、また優先度の高くないアイテムに対して無駄にリソースを割くなど非効率極まりなかったです。

3.課題の対応方法と担当を振り分ける

 ここからは技術者の対応になるのですが、問題の本質を見極めて具体的な対応方針を検討していきます。今回は自分の力だけで解決策を提案できませんでしたので様々な分野の専門家の力をお借りしました。
※具体的な内容についてはここでは書ききれないので、おいおい紹介したいと思います。

解決策の中ですぐにできる or 難易度が低いものについてはタイ側で、詳細検討が必要 or 難易度が高いものについては日本側で対応するように役割分担を振り分けました。

両者で得手不得手がありますし、時間的な制約も厳しいのでお互いベストパフォーマンスを発揮するためには役割を明確にしてロスを減らしていくしかありません。

4.実行履歴を管理する

 最後にKPIの推移と施策がしっかり実行できたかどうかの管理をしましょう。担当者がきちんと施策が実行できていない場合はプロジェクトからフォローを入れます。時間的に余裕がありませんので何か一つでも重要課題の進捗を見落とすと詰んでしまう可能性がありますので、面倒かもしれませんが何かしらの方法で進行をチェックをできるようにする必要があります。

例)課題、担当者、期日をエクセルシートに箇条書きにして、対応が終わればチェックするなど。

後書き

このような問題点の多いプロジェクトでは、自分がプレイヤーになって問題解決に当たりたくなってしまうものですが、ぐっと堪えてプロジェクトのマネジメントをすることに徹することにしました。誰かが既にプロジェクト管理されているようであれば不要なのですが、私のケースでは無管理かつ無法地帯状態でしたし、やはり自分一人よりもチームで出せる成果の方がはるかに大きいですので、効率的にチームを使えるかどうか、その方法を実行できるかどうかを常に考えるようにしています。

モノづくりの改善においてはあらゆる問題が一瞬で解決するような魔法はありませんのでできることを一個ずつ積み重ねること、かつロスを可能な限り減らすことが大事だと思っています。

余談

完全に世間話ですがこちらの駐在員は異様にゴルフ熱が高いです。

1.生活環境がそろわないうちから休日のゴルフに連れまわされる。

2.ゴルフに関するメールにはすぐに返信がある。

3.強制的に2社のゴルフ保険に加入させられる(1社で十分じゃね・・?)。

4.強制的に会員権を購入させられる。(前任者の負の遺産で50000THB・・・・・)

etc...

やはり海外の生活は何かとストレスなので、ゴルフ(生きがい)に熱中してしまうのでしょうね。日本ではここまでゴルフ好きになるとは思えないですし。とはいえ、こちらのラウンドは日本に比べると本当にリーズナブルですしコースも自然豊かで綺麗です!

今の仕事が落ち着いて心にゆとりがある状態で堪能したいものです。

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ゴルフ場での朝焼け