真空エジェクタバルブのトラブル(原因分析トレーニング)
ある設備でエジェクター(圧空を真空に変換する空圧機器)関連のトラブルが発生しておりました。
今回はクイズ形式で原因分析を考えていきたいと思います。
トラブル状況
エジェクタバルブが真空破壊して欲しいタイミングで真空吸着し続けてしまうため、製品を真空吸着し続けてしまい離すことが出来ない。
ソフト変更は特に実施していない。
エジェクターのサイレンサ(エアの排出口)からは圧空が漏れている音がしている。
模式図になります。字が小さくて見づらいかもしれません、すみません。
設問
さて、どの部位に原因があるのか以下の4択から原因を選択してください。
- サイレンサ
- フィルタ
- バルブ&スイッチ
- 真空チューブ
回答
正解は、、、、、
3、バルブ&スイッチ
になります。
スイッチ内部の電磁弁の部品故障によって、真空吸着OFFの信号が出力されているにも関わらずバルブが動作しなかったことから真空破壊ができませんでした。
1,2,4が不正解な理由を説明します。
1.サイレンサ
エジェクターで真空引きをしている際はサイレンサから空気が出ているのが通常となります。よって、この現象が真空破壊できない原因ではありません。バルブ&スイッチがOFFしないことが問題です。
逆に、真空吸着中にサイレンサから空気が出ていない場合は真空の到達圧力が下がりますので、サイレンサを清掃するか交換して下さい。ゴミが詰まって真空が劣化してしまうトラブルは度々発生します。
2.フィルタ
フィルタは確かに汚れています。ただし、その場合は真空引きできないトラブルが発生しますので、今回発生しているトラブルの状況にはなり得ません。真空吸着できない場合はフィルタの詰まりは疑うポイントです。
4.真空チューブ
真空チューブに問題がある場合においても、真空が引けなくなるため、上記と同様の理由で不正解です。逆に真空吸着できない場合は、チューブが途中で折れ曲がっている、配管が破れている可能性があります。
余談
なぜ、このような設問を行ったかといいますと、この状況が発生した際にタイ人の保全スタッフが全く原因をつかめておらず検討違いな対応をしていたからでした。
特にサイレンサからエアが漏れていることが原因だと強く主張していたのですが、エジェクタの機構を理解していれば真空がONしているのでサイレンサから圧空が出てくるのは当たり前のことです。
機器の構成と機能を正しく理解して実際に起こっている事象と照らし合わせることで、正確に原因が分析できトラブルを早期に解決することができます。
タイのスタッフはこの問題の解決に数時間以上費やしており、生産ラインが長時間ストップしてしまいました。
正しい原因分析ができていれば、スペアパーツが手元あるなら20分で解決できる問題です。